日本ではなんと9人に1人が乳がんになると言われており、発生率の高い癌であると言えます。そして乳がんはがんによる死亡原因の上位に位置しており、罹患する人(かかる人)は30歳代後半から増加します。40歳以上の女性では最も罹患する人が多いがんです。乳がんは女性だけがなる病気ではありません。女性の割合の方が多いことは事実ですが、男性もなります。
しかし、胸部に違和感を感じて男性が思い浮かべる内容に「乳がんかも」という不安要素はあまりないと思います。そして自治体等が、無料で検診チケットを送付してくれることもあるけれど、その権利は女性にのみ送られてくるのが常です。
女性はもちろん、男性も全ての方が乳がんへのリスクを日頃から意識をしておくことが大切になります。ここでは日頃から行っておくと良いセルフチェック法や発症後のリハビリについて解説します。
乳癌で見られる症状
見られる症状
- 乳房のしこり(主症状)
- 乳房に窪みができる
- 乳頭や乳輪がただれる
- 左右の乳房の形が非対称になる
- 乳頭から分泌物が出る
乳房のしこりは、乳癌以外でも見られることもあります
- 乳腺症(生理の前後でしこりの状態が変わります)
- 繊維腺腫
- 葉状腫瘍
とあまり聞きなれない状態の場合にも、しこりが見られる場合があります。だからこそ、受診が大切です。
違和感を感じたら病院で診察を
違和感を感じても、病院で診察を受ける行為は非常にめんどくさく、また仕事を優先しがちです。でも、なんらかの違和感を感じたら、まずやることは病院受診です。
今の時代は、情報が溢れています。だから検索すればなんでも調べられちゃう。ただし、それは、Web上の溢れた情報と、不安な状況がもたらす”自己診断”の状態です。まずは、病院で正しく診察をしてもらいましょう。それからです。早めに診断を受けることで、治療の選択肢が多くなります。
とはいえ、日頃からのセルフチェックももちろん重要です。そこでいつもとは違う違和感を見つけやすくなることも多いのです。
男性って、乳癌検査を受けにくい、専門病院だと入りにくいイメージです
自身が乳癌家系なので、定期的にブレストケアクリニックに通っています。
しかし、そこで男性も見かけますが、やはり 居場所がないというか・・居心地が悪いというかそんな雰囲気を感じます。
クリニック自体は、ゆったりソファーが置いてあったり、雑誌があったりとてもくつろげる雰囲気を作られているのに、「男性」は、他大多数が老若男女の女性が多い環境なので待機時間も居場所がない感じでちょっとお気の毒に感じていました。
そんな時には、こういった総合病院の方が待ち時間等の居場所が確保できるかもしれません。
乳がんのセルフチェック方法
乳がんのセルフチェックの方法は次のとおりです。
- 体がぬれた状態で石けんを指先につけ、指の腹を胸に押しつけながら乳房に小さな「の」の字を書くように触ります。
- 乳頭周辺から始め、次第に外側へ広げていきます。
- 両方調べたら、わきの下に指を差し入れ、ぐりぐりがないか調べます。
- 最後に乳首から分泌物(特に血液)がないか調べます。
乳がんのしこりは、石や梅干しの種のように硬いのが特徴です。乳がんの発生から1cmまで約5年、発生から2cmになるまでは約8年です。セルフチェックを習慣にすると1cmの大きさにも気付けるようになります。

乳がんの手術後のリハビリテーション
乳がんを発症してしまい、手術を受けた後にはリハビリテーションが必要になります。切除した部位や、治療内容によって退院後の症状も異なりますが、それぞれの日常生活に戻るための動きを再獲得するために、注意すべきこともあります。ここでは、基本的に退院後に行う体の動かし方のみをお伝えしていきます。(入院中は基本的にリハビリ処方されるため)
乳がんの手術後、多くの方が肩の動かしにくさ、つっぱり感、むくみなどを経験します。
特に、リンパ節を切除した場合や放射線治療を受けた場合は、可動域が狭くなったり、むくみが出やすくなります。
リハビリは、「術後の回復を助け、日常生活を快適にする」ためにとても重要です!
ここでは、具体的なリハビリの動きや、セルフケアの方法を参考までにご紹介します。
💡 術後1日目~1週間(超初期)
この時期はまだ手術のダメージが大きく、無理に動かすと痛みが強くなることがあります。
まずは「呼吸」と「手先の動き」からスタート!
深呼吸エクササイズ(肺を動かす)
- 椅子に座るか、ベッドの上でリラックスする
- 鼻からゆっくり息を吸う(3秒かけて)
- 口をすぼめて、ゆっくり息を吐く(5秒以上かける)
- これを5回繰り返す
肺をしっかり動かすことで、血流を促し、回復を早めます!
ゆっくり行い、リラックスすることを意識しましょう。
手・指の運動(むくみ予防)
- グーパー運動 → 指を大きく開き、ぎゅっと握る(10回)
- 手首回し → 手首をゆっくり回す(右回り・左回り 各5回)
手や指を動かすことで、リンパの流れを良くし、むくみを防ぎます!
💡 術後1週間~1ヶ月(可動域を広げる時期)
この時期は、肩や腕を動かすエクササイズを始めていきます。
無理をせず、ゆっくりと行うことが大切!
壁歩きエクササイズ(肩の可動域を広げる)
- 壁の前に立ち、手術した側の手を壁にそえる
- 指を使って少しずつ上に歩かせるように動かす
- 痛くない範囲で手を上げたら、ゆっくり戻す
- 1回 5往復 を目安に
無理に高く上げる必要はなし!
少しずつ可動域を広げていくことが大切
肩回しストレッチ(肩の緊張をほぐす)
- 背筋を伸ばし、両肩をすくめる(5秒キープ)
- すとんと肩を落とす
- ゆっくり前回し・後ろ回し(各5回)
力を入れすぎず、リラックスして行うことが大切!
呼吸を止めずに、ゆっくり行う
術後1ヶ月以降(腕の動きをなめらかにする時期)
日常生活に戻る準備をしていく段階。肩や腕の動きをスムーズにするために、もう少し大きな動きを取り入れます。
タオルストレッチ(肩甲骨を動かす)
- タオルの両端を持ち、腕を前に伸ばす
- ゆっくりと頭の上まで持ち上げる
- 痛みがなければ、さらに後ろに引いて肩を開く
- ゆっくり元の位置に戻す(5回繰り返す)
肩甲骨周りを動かすことで、可動域を広げる
痛みがある場合は無理せず、少しずつ行う
ペットボトルを使った筋トレ(軽い筋力強化)
- 500mlのペットボトル(または軽いダンベル)を用意
- 椅子に座り、背筋を伸ばす
- 肘を90度に曲げたまま、ゆっくり上げ下げ(10回)
重い負荷は不要!軽いものからスタート
ゆっくり動かして、筋肉を意識
リンパ浮腫を防ぐセルフマッサージ
手術後は、リンパの流れが滞りやすく、**むくみ(リンパ浮腫)**が起こることがあります。
以下のセルフマッサージを行うことで、リンパの流れを助けましょう!
リンパマッサージ(軽くなでるだけでOK)
- 鎖骨の上を、手のひらで優しくなでる(5回)
- 脇の下を軽く押す(3秒キープ×5回)
- 腕の内側を、手のひらでゆっくりなで下ろす(5回)
強く押しすぎない!「優しくなでる」だけで十分効果あり
1日2~3回を目安に
生活の工夫で快適に過ごす
🟢 リラックスできる睡眠環境を整える
→ 枕やクッションを使い、楽な姿勢で寝る。手術をして以降、寝る姿勢でも、辛さを訴える方は多くいらっしゃいます。手術をした方の腕をあまりしないように、背中に枕やタオル等置いて、角度を調整すことで、体重と重力による手術をした方にかかる負荷は減らすことが可能です。
🟢 重い荷物は避ける
→ 両肩に分散させる or キャリーケースを活用
🟢 日常の動きもリハビリに!
→ 髪をとかす、洗濯物を干すなど、腕を使う動作を意識
無理なく続けることが大切!
乳がん後のリハビリは、毎日少しずつ、無理せず続けることが大切です。
- 焦らず、できる範囲で
- 痛みがあるときは無理しない
- リンパ浮腫対策も忘れずに
手術後の生活の中でこんな時は
手術跡が痛む時は
「冷やす」という冷却療法があります。病院でも、アイスノンを常備しています。(柔らかいタイプ)
これにより、一時的にではありますが、熱感や痛みの緩和は可能です。
腕が動かしにくくなってしまったら
脇の下などのリンパ節郭清を施術にて行なった場合、時に、手術をした側の腕や肩が動かしにくくなる場合があります。病院のリハビリテーション介入の時期であれば良いのですが、それ以降も自身での自宅でのリハビリテーション動作をお勧めいたします。
下着は締め付けないものを選ぶ
術後の方にとって胸部の締め付けは大敵です。締め付けのない下着が多数販売されているのでご自分にあったものを選びましょう。
高評価!乳がん術後のパッド
術後に左右のバストのカップ違いが気になる方も多いと思います。病院で紹介されたものが高価でお悩みの方は市販ものを試してもいいかもしれません。比較的お安く良いものがあります。
乳癌後のボディケア、ウィッグについて相談もできるお店
患者様のために下着を作っている会社があります。患部に優しい素材だったりパーツや製作方法で作られています。手術後は、胸部がとてもデリケートになっています。市販のものは、縫い目だったりワイヤーだったり、ちょっと当たると痛い場合もあります。
ウィッグも同様に取り扱っているお店です。いろいろな地域で試着相談会等されているようなので、一度お問合せされてもいいかもしれません。
リンパ浮腫になってしまったら
原発性と続発性があります。原発性は、もともとリンパ管の機能が弱いという状態。続発性は、癌の治療に際してリンパ節を切除したり、放射線治療をすることでリンパの通り道がダメージを受けて生じるものです。
そもそも、リンパってなんでしょう。血液成分が毛細血管から周囲の細胞の隙間に漏れ出した水分やタンパク質などの老廃物を心臓に向かって運ぶ液のことをリンパ液、それが通る道をリンパ管と言います。
乳癌の手術でリンパ節郭清を施術された場合、リンパ浮腫になる可能性もあります。
リンパ浮腫を予防するために注意することは
- 患部側の腕に、重いもの等の負荷をかけないこと
- 激しい運動を避けること
- 締め付けのある指輪や、時計、下着、靴下等使用を避ける
- 患部の四肢が蚊に刺されたり、傷をつけないようにする
しかし、注意した生活を送っていても、予期しない状態が起こることはあります。なんだか、浮腫が引かないと思ったらリンパ浮腫かも。そんな時にも、まずは受診しましょう。
乳癌手術をした病院がリンパ浮腫に対応できている病院ではない可能性も多々あります。その時は、専門の病院を受診することをお勧めいたします。まずは、主治医に相談するか、皮膚科や血管外科、形成外科を受診されてください。
リンパ浮腫の治療には、リンパドレナージ等複合的治療があり、2016年より保険適用となっています。また、リンパ管静脈吻合術という外科的治療も選択肢としてあります。
参考までに、下記に対応可能なセラピストが在籍している病院が載っているページを掲載しておきます。